スペシャルコラム

COLUMS

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私の料理サロンでは月に一度の料理写真教室とスタイリングの講習会を開催しています。写真教室ではカメラマンの先生から写真撮りのノウハウの講義があり、受講後に実習で私の作った被写体を撮影するというカリキュラムです。この先生のお話の例えが料理と撮影のテクニックを絶妙に絡ませて大変にわかりやすい!例えば何を作るか決めないでいてはお料理は暴走して完成を見ない、写真も何を撮りたいのかわからず被写体に向かっても良い写真になるはずがない、などなど、、、、イメージして、写真なら露出やシャッタースピードを設定、お料理なら材料を揃えてお道具を出してお皿を決めて、ここからスタートです。

お話を私の守備範囲のお料理に移すと、新しい一皿を考え出す時、まずは目的や季節に合わせて主素材を決めます。それが決まれば次はソース、付け合せと頭の中で完成品を思い浮かべながら作業を進めます。
主素材と副素材をつなぐ味、香りの共通点を見つけ、食感なども加味してお皿の中のハーモニーを完成させます。一例ですが、ゴーヤとグレープフルーツのゼリーでご説明いたします。ご存知の通りゴーヤは苦い素材です。これに合わせて選んだのは同じ苦味を少し感じるグレープフルーツ。でもバラバラで合わせてはいけません。二つに共通するつなぎ材料が必要です。今回は両方と相性が良いハチミツを選びました。これでバラバラに食べると単調になってしまう二つをいちどきに口に運ぶと美味しいハーモニーが生まれます。最後はアクセント、緑色が両方にあった色、そこで緑色の皮を持ち、少し苦味も感じる柑橘類のすだちやカボス、ライムの皮を散らしました。デザートでお話をいたしましたがアントレでもメインでも同じです。

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いつも気をつけていることが一つあります。それは主素材が主役だということです。写真のスタイリングでも料理写真ならお料理が主役です。どんなに高価なお皿に盛り付けてもフォーカスはお皿ではなくお料理に合わせます。お料理の一皿で言えば、私はボリュームも含めて主役7割、脇役3割と配分をしています。お皿が素敵だったとか、人参のグラッセが美味しかった(それももちろん大切ですが)という印象よりハンバーグが美味しかったと思って帰っていただきたいと思っています。

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このように先ず自分が相手に何を伝えたいのかイメージしてそれをシンプルに伝える。大切なことだと思います。写真の先生のお話を理解したうえでの撮影、受講者の皆さんは自分の撮った写真の進歩に驚き、満足げにお帰りになります。きっと霧がかかっていたイメージがはっきり見えて、またはっきりと頭で思い描いてシャッターを押されたのだと思います。
あれこれ欲張らず主張したいものに的をしぼって直球勝負で相手に伝える。もちろんイメージしたものを現実に形にできる技術は常に磨いておかなければなりません!
どんな分野にも共通する大切なことだと思います。

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