あっという間に春がやってきました。
まだまだ風は冷たいけれども日々陽射しだけは確実に明るくなっています。ふきのとうを皮切りにつくしやのびる、山のものならたらの芽、わらび、ぜんまいなどなどほろ苦さが持ち味の山菜が出回ります。
てんぷらや和え物などで季節の味を楽しまれるご家庭も多いのではないでしょうか。
フランスではほうれん草とベーコン、くるみを合わせて温かいドレッシングをかけたサラダをいただきますが、春はこのサラダをタンポポで作ります。しっかりした肉質の葉でほろ苦い味がします。タンポポはフランス語ではpissenlit(ピサンリ)と言います。しかし正式なこの名前よりニックネームのdent-de-lion(ダンドリオン)と呼ぶ方がポピュラーかと思います。こちらは日本語ならライオンの歯と言う意味です。あのギザギザの葉がライオンの歯に似ているというわけです。道端の可憐な小さな植物がライオンだなんてユーモラスですね。
ずっと以前は自然に植生したものを摘み草していたのだと思いますが、現在は栽培された食用たんぽぽをマルシェで買ってお料理をします。
(フランス ランドの極太白アスパラ)
そしてこの後に続くのはホワイトアスパラ、春のキノコのモリーユ(編み笠茸)です。両方とも高級食材として市場に出回ります。アスパラガスの価格はその太さに比例して高価格となります。立派なアスパラが20本ほど束ねられて少し紫がかった穂先がピンと空の方に向いて並んでいます。
(茹でたアスパラ)
ホワイトアスパラはちょうど日本人が秋に一度は松茸をいただいて秋の香りを楽しむのと同じ感覚でこれらの出回りを心待ちにしています。グリーンアスパラより筋がたっており専用の鍋(パスタ専用のお鍋のように寸胴で中にザルが付いています。穂先の柔らかい部分が茹ですぎにならないように立てて茹でるというわけです。)で柔らかくなるまで茹でて卵黄とバターたっぷりのオランデーズソースという温かいマヨネーズ状のソースでいただくのが一般的です。
(グリーンアスパラのポタージュとパプリカのロースト)
茹でて温かいうちにフレンチドレッシングにつけてマリネをし冷まして味をなじませたサラダもお惣菜屋さん、シャリュキュトリーでよく見かけます。前述の通り高い野菜ですので、洋ねぎのポワロー(日本ではポピュラーではないのでこちらも高価格ですが)でこれを作り家庭料理として楽しみます。こちらはなんと「貧乏人のアスパラガス」と呼ばれています。
食卓で家族揃って季節を楽しむ。素敵なことだと思います。そして残念ながらだんだん消えゆく習慣のようにも思われます。子供の頃にこんな体験をたくさんしていたら大人になっても味覚として、楽しい家族との思い出として覚えている、そして次世代へと伝えていく!好循環だとお思いになりませんか?
SNSの普及で急に食に関する情報量も膨大なものとなり、つい流行りの見た目のおしゃれなお料理が一番と思いがちですが、決してそんなことはありません。季節、季節に出回る旬の味覚を家族の喜ぶ顔を思い浮かべて無理をせず自分の能力範囲のなかで気軽に調理をしてシンプルに味わう。
これに勝るものはないと考えています。BON APPETIT !