人は突如としてフレンチトーストに取り憑かれる。
なにがなんでも作らなくてはならぬという思いが人を突き動かすのだ。
それはかなりの確率で土曜の朝であることが多い(池田調べ)。
土曜の午前中にたまたま予定がなくて、ゆったりとした朝を迎えられたりすると、いそいそと卵を割り、卵液を作りはじめるのである。
ホットケーキはいつのまにやらパンケーキと呼ばれるようになった。
フレンチトーストはパンペルデュと言わなければいけないらしい。
私はこの日、シロップをかけて食べる甘いのではなく、おかず系の「サレ」を作ってみる。
つまり、パンペルデュサレ。
そんなものがあるとどこで知ったんだかもうよくわからなくなったのだけれど、朝起きると天啓のように、「おかず系のフレンチトーストを作りたーい!」という気持ちで満々だったのだ。
卵1個をボウルに割って、牛乳を150ccぐらい加えて混ぜる。
そこに、ありあわせのパン(このときはバゲット)を浸す。
日本においてごはんを残すことが「もったいない」ということで禁じられているように、フランスではパンを残すことがタブーなのだそうだ(とフランス人に聞いたことがある)。
だから、残ったパンは、スープに入れたり、パンペルデュにする。 買ってきたばかりのパンはもったいないし、むしろ乾燥して水分が飛んだ残り物のパンのほうがおいしくできる。
卵液を浸したパンを、バターを溶かしたフライパンで焼く。
「サレ」を作りたい気で満々な私はハムもいっしょに焼く。
少し浅めで焼き上げたなら、パンの上にハムをのせて両者を合体させ、さらにチーズをのせてオーブントースターへインする。
チーズがとろけて少し焼き目がついたら焼き上がり。
お皿に盛って、黒胡椒(ピンクペッパーならなおおしゃれ)をふって完成である。
パンに滲みた卵チーズのとろとろと
ここに酸味があるといいなとつい思ってしまったが最後、どうしてもそれを作らなくては気がすまない。
そこでできたのが、チーズの代わりにトマトをのせた作品である。
先の手順のチーズをトマトに変えて、トマトがいい感じに焼けたところでオーブントースターから取り出せばよろしい。
さらにパンペルデュ欲の加速が止まらない。
バターの甘さとコクを、ふわりとエアリーにここに加えたくてたまらないのだ。
そうだ、もうあのパンしかない。
私は近所のパン屋へとひた走った。 早く思いを遂げたいので自然と急ぎ足になるわけである。
ゆったりとした土曜の朝なのに、なにをやっているんだ。
パンペルデュは残ったパンで作るとかいうゴタクはどこに行った?
そういえば、あの人も息子を病院に連れて行くとき必死に走ってたっけ。
買ってきたばかりのクロワッサンでパンペルデュを作る。
そのまま食べてもうまいぱりぱりしたものに、卵液を浸す。
ちょっと贅沢すぎやしないかとどきどきしてくる。
クロワッサンを上下まっぷたつにする。
下部分だけ浸して、ハムとともにバターを溶かしたフライパンへ。
浅く焼いてチーズをのせてオーブントースターへ。
チーズが溶け出したら、オーブントースターを開いてとっておいた上の部分をかぶせ、さらに30秒〜1分。
さくさく&とろーり。
バター感がふわり加わったパンペルデュ・サレができましたとさ。